公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター
HIECC/ハイエック(旧 社団法人北方圏センター)
Hokkaido International Exchange and Cooperation Center
公益社団法人
北海道国際交流・協力総合センター
Hokkaido International Exchange and Cooperation Center (HIECC)
北海道国際情報ネットワーク
2013.08.30
新シルクロードと北海道
HIECC調査研究部 研究員 吉村慎司
現代版シルクロード誕生の序章とでも言うべき光景がそこにあった。中国と、その西隣にある中央アジア・カザフスタンとの境界エリアである。石油など地下資源で急成長するカザフは、国境の街「ホルゴス」を世界的な物流拠点にしようと、中国と合作で広大な保税特区を整備中だ。
筆者は8月上旬、中国・新疆ウイグル自治区の首府ウルムチで、このホルゴス経由でカザフの商都アルマティに向かう国際バスに乗り込んだ。国境付近までは半日強。出入国エリアで周囲を眺めると、両国側とも敷地内で建設車両が活発に動いており、ほぼ完成した物流倉庫や車両ターミナルも目に入る。「特区」の敷地は札幌ドーム95個分。来春とされる稼働の後には、両国のドライバーが域内をビザなしで往き来できるようになり、扱える貨物量が大幅に増えるという。
場所が場所、ユーラシアの真ん中である。ヨーロッパへもアジアへも、いずれは中東方面へもアクセスできる全方位の物流拠点になるというわけだ。敷地内にはホテルや大型商業施設をつくり、将来は鉄道を敷く計画もあるという。両国政府は、特区に世界中から工場や在庫拠点を誘致するつもりだ。
特区は「ホルゴスICBCC(”International Cross-border Cooperation Center”の略)」という。プロジェクトに、カザフ側で日本の運送会社センコー(大阪市)が関わっている。国境地帯は撮影禁止なので写真で紹介することはできないが、筆者が目にした倉庫の一つは同社が現地企業と合弁で建てたものだ。
旧ソ連という歴史的経緯もあってかカザフは日本では目立たない。だが現実には昨年の1人あたりGDP(国内総生産)は約1万2000ドルと中国の2倍。ASEAN諸国と比べればさらに高い水準にある。センコーは、「物流立国」へのいち早い参画で先行者利益をねらっている。
数年前まではカザフに関わる日本企業と言えばエネルギー業界ぐらいで、あとは自動車・家電を除けばほとんどゼロだったようだが、今年に入り、消費拡大に着目したコンビニエンスストアのミニストップがアルマティに初出店した。
カザフは厳冬など北海道との共通点もある。日本国内4カ所の名誉領事館のうち一つは札幌だ。道内経済界でもう少し話題になってもおかしくない国だと思うのだがどうだろう。