公益社団法人 北海道国際交流・協力総合センター
HIECC/ハイエック(旧 社団法人北方圏センター)
Hokkaido International Exchange and Cooperation Center
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北海道国際交流・協力総合センター
Hokkaido International Exchange and Cooperation Center (HIECC)
北海道国際情報ネットワーク
◆【3】北方圏交流新時代―新千歳‐ヘルシンキ線就航に向けて フィンランドの日本食材店オーナー 冨田 憲男さんに聞く
冨田さんを日本で知る人は多くはない。ただし、フィンランドではよく知られた存在だ。昨年12月のテレビ朝日の「陸海空地球征服するなんて」なるバラエティ番組で「フィンランド地元民に聞く最も有名な日本人は誰か」というアンケートが行われ、結果は以下の通りだった。
1位 葛西紀明(スキージャンプ) 66票
2位 ツルネン・マルテイ(元政治家) 28票
3位 村上春樹(作家) 22票
4位 黒澤明(映画監督) 21票
5位 羽生結弦(フィギュアスケート選手) 20票
6位 舘野泉(ピアニスト) 19票
7位 田中亜土夢(サッカー選手) 15票
8位 小田二郎(鮨職人) 11票
9位 冨田憲男(経営者) 10票
10位 高梨沙羅(スキージャンプ) 9票
と、母数は少ないものの高梨選手を抑え堂々の9位。
冨田さんは1986年からフィンランドに在住。80年代後半から日本食食材店を経営し、日本食材をヘルシンキ市を拠点に広げてきた。昨年、日本食・食文化の魅力を発信してきた功績が認められ「日本食普及の親善大使」として農水省から表彰を受けた。その他、日本とフィンランドとの相互理解への尽力が認められ、平成29年度外務大臣表彰者(個人)も受賞している。
また、ヘルシンキ近郊にはフィンランド人が桜を愛でながら日本文化を学ぶ「桜祭り」が行われている公園がある。その「桜」の仕掛人が冨田さんだった。当時フィンランド日本人会会長であった冨田さんは2006年に「フィンランドで花見を」の思いをフィンランド在住の日本人に提案。提案が支持され様々な人たちの協力を得て、2007年にはヘルシンキ市から認可が下り、無事桜の成木約150本が植樹された。2017年にはフィンランド独立100年を記念し新たに10本の桜が植えられ、今年は北海道から種子を輸入しフィンランドの研究所で育苗されてきたエゾヤマザクラが植えられる。今では花見時期に3万人以上、そのほとんどがフィンランド人という一大イベントに成長した。過去のイベントでは会場となるヘルシンキ市内のロイフヴオリ公園で和太鼓や武術の演武、本格的な今川焼を提供したこともあった。
フィンエアーで北海道とヘルシンキが結ばれることについて、現地の事情に明るい冨田氏に話を伺った。
――フィンエアーで北海道とヘルシンキが12月からつながりますが
冨田氏―非常に良いこと。人的交流が増加するのは当然、経済活動の活発化も期待できる。渡航時間短縮は忙しいビジネスマンには大きなメリットとなる。
――特に北海道ということでいえば、具体的にどのような利用が期待できますか?
冨田氏―例えばここ数年の寿司ブーム。従来中国人やネパール人のお店で安く食べることができたが、最近日本人の職人が進出し「ヘルシンキで比較的本物志向の寿司が食べられる」ということで差別化に成功している。日本のコメを輸入しており、その分高いがおいしいと評判だ。昨年は50トンのコンテナ3本輸入している。その店には昨年前桜田五輪相も来店し、絶賛していた。寿司のネタなどに関しては輸送時間の短縮で生のものが提供できる可能性が出てくる。EPA発行も追い風になる。
――北海道米も特Aランクのお米があります
冨田氏―コメは船便。コストがかかりすぎると、商売にはならない。前にある県の特産品の売り込みを受け、地元の食通を集め試食物産展を行ったことがある。リンゴやニンニクやホタテを売り込んだが、結局流通コストを上乗せしたら全く売れなかった。試食では皆美味しいというが、1個10ユーロのリンゴを買う人はいない。北海道のからの空輸便で流通コストを上乗せして、尚且つ売れるものを探さなければならない。マーケティングは絶対に必要。「特産品だから売りたい」は通用せず「売れるものを探す」から始めなくては商売にはならない。道産米もいいでしょう。北海道から船便で米を50トン送りたいという希望があれば、お手伝いする。
――北海道の企業や食産業関係者がフィンランドに進出したことはありますか
冨田氏―自分の知る限りはない。一度、西山製麺さんの相談を受け、こちらで試食会をしたことがある。冷凍麺だったが、非常に好評で「ぜひこのラーメンが食べられる店を」とまで言われた。西山製麺さんはラーメン店の経営はしていないということで、話は立ち消えになったが、ラーメン出店のポテンシャルはあると思う。ヘルシンキにもラーメン店はあるがほとんど中国人が経営していて、本場のものとは言えない。西山さんはドイツにも麺を出しているはず。日本3大ラーメンの一つ本格的な札幌ラーメンは歓迎されるはず。
――芬日国交樹立100周年ですが、日本人会では何か考えていますか?
冨田氏―日本とフィンランドの国交100周年を記念し、浜松フィンランド協会が同国にみこしを寄贈する。5月18日にはヘルシンキで、現地住民とみこしを担ぎメインストリートを5Km練り歩くお披露目イベントを開く。みこしは群馬県の宮大工に依頼して作った本格的なもの。イベント後には国立博物館にも展示され、終了後は寄贈する予定。今はその準備でてんてこまいだ。
―――そのほか最近のフィンランドの話題を。
冨田氏―週末に国政選挙があり社民党と真のフィンランド党の議席争いが注目されている。移民排斥を謳う真のフィンランド党が議席を伸ばすと予想され、右傾化が気になっている。あとは、8月に皇室が来芬する予定。その時期にメルケルさんが退陣し、新EU議長も決まるので大使館は対応に追われるだろう。また、無印良品がヘルシンキに欧州旗艦店を出店する予定だ。ロンドン、パリではなくヘルシンキにというところが、ミソで北欧デザインに親和性を見出したのだろう。
――最後に「東京館」の売れ筋商品は何ですか?
冨田氏―キューピー深煎りごまドレッシングが不動の一番。あとはフィンランド人の調理人が和包丁をよく買っていく。
――ありがとうございました。
冨田氏―北海道からたくさんの方々が来ていただくことを期待している。